カローラクロスにPHEVのモデルがないのはなぜだろう…?そう疑問に感じたことはありませんか。これだけ人気の高いSUVですから、普段は電気で静かに走り、遠出も安心なPHEVの選択肢があれば最高に違いない、と思いますよね。
実は、カローラクロスにPHEVが設定されていないのには、技術的に作れないといった理由ではなく、トヨタのしっかりとした戦略的な理由があるんです。
この記事では、私があなたの代わりにその背景を詳しく調べ、「なるほど!」と思っていただけるように情報を整理しました。難しい話は抜きにして、わかりやすく解説していきますね。
この記事を読めば、以下の4つのことがスッキリわかります。
- カローラクロスにPHEVがない、3つの戦略的な理由
- 兄貴分にあたるRAV4やハリアーとの価格や役割の違い
- PHEVの心臓部である「バッテリー」をめぐる生産の事情
- 今の日本市場におけるPHEVの立ち位置(シェア率)
カローラクロスにPHEVがない3つの理由
カローラクロスにPHEV(プラグインハイブリッド)モデルがない主な理由は、①クルマの価格帯と与えられた役割、②PHEVに不可欠な電池の生産事情、③世界中の国で売るためのグローバル戦略、という3つの戦略的な判断が背景にあります。技術的に作れないわけではなく、トヨタのラインナップ全体で最適なバランスを取った結果、現在のカローラクロスは「ハイブリッド専用車」という位置づけになっているのです。
理由① 価格比較|上位PHEV車との役割分担
カローラクロスの魅力は、なんといってもその「ちょうどよさ」。
たくさんの人に選んでもらえるように、価格を抑え、実用性を高めたSUVとして開発されました。
一方で、トヨタのPHEVモデルは、少し上の価格帯で「もっといい走り」や「電気だけで長く走れる」といった付加価値を提供する役割を担っています。
下の表を見ると、その価格帯の違いがよくわかります。
| 車名 | パワートレイン | 価格帯(消費税込) |
| カローラクロス | ハイブリッド | 約278万円~390万円 |
| プリウス | PHEV | 約390万円~461万円 |
| RAV4 | PHEV | 約566万円 |
| ハリアー | PHEV | 約620万円 |
もし、カローラクロスにPHEVモデルを追加すると、価格はどうしても400万円台後半から500万円近くになってしまうでしょう。
そうなると、すでにあるプリウスPHEVや、お兄さん格にあたるRAV4 PHV、ハリアーPHEVと価格が近くなり、トヨタのラインナップの中でお互いに競合してしまう可能性があります。
それぞれのクルマが持つキャラクターや役割を明確に分けるためにも、カローラクロスは「買いやすいハイブリッドSUV」という立ち位置をしっかり守っている、というわけですね。
理由② 電池供給の問題:トヨタの生産事情
PHEVの心臓部ともいえるのが、大容量のバッテリーです。
このバッテリーの供給、つまり「どれだけ作れるか」が、PHEVモデルを増やす上での大きなカギになります。
実は以前、兄貴分にあたるRAV4のPHEVモデルが発売されたとき、予想をはるかに超える注文が殺到し、バッテリーの生産が追いつかなくなってしまったことがありました。
その結果、一時的に注文の受付を停止せざるを得なくなったのです。
このように、高性能なバッテリーは生産できる数に限りがあります。
限りある資源をどのモデルに優先的に使うか、というのはメーカーにとって非常に重要な判断です。
一般的には、より価格帯が高く、収益性の高い上級モデルに優先して配分される傾向があります。
こうした背景から、トヨタはまずRAV4やハリアーといった上級SUVにPHEVを設定し、量販モデルであるカローラクロスはハイブリッドで広くカバーするという、現実的で賢明な戦略を選んだと考えられます。
理由③トヨタの世界戦略とPHEVの未来
カローラクロスは、日本だけでなくアジアや欧米など、世界中のさまざまな国や地域で販売されている「グローバル戦略車」です。
世界には、まだまだ充電インフラが十分に整っていない地域もたくさんあります。
どんな場所でも安心して使えるように、まずはガソリンエンジンと、充電いらずのハイブリッドモデルを中心に展開してきました。
日本の公式サイトで「ハイブリッド専用化」とうたっているのも、こうした世界的な視点での役割分担が反映された結果と言えるでしょう
また、トヨタは今後のPHEVについて、**「電気だけで200km以上走れる、限りなく電気自動車に近い存在(=実用BEV)」**として、さらに進化させていく方針を明らかにしています (トヨタの新経営方針発表)。
「PHEVは最先端の電動車体験を提供する上位モデルへ」という考え方と、「カローラクロスは誰もが買いやすい量販SUV」という役割。
この2つのすみ分けが、PHEVモデルが設定されていない理由をより明確にしています。
もちろん、将来的にバッテリーの価格が劇的に下がったり、市場の環境が変わったりすれば、カローラクロスにPHEVが追加される可能性もゼロではありません。
ただ現時点では、ハイブリッドが最もバランスの取れた選択肢だと判断されているのですね。
日本のPHEVのシェア率推移
日本のPHEV(プラグインハイブリッド)のシェア率は、2023年に登録者(軽自動車を除く乗用車)販売全体の**約1.9%で一つのピークを迎え、2024年には1.7%**と少し落ち着きを見せています。ただ、依然としてハイブリッド車(HV)が市場の6割以上を占める「ハイブリッド大国」であり、PHEVはまだ「新しい物好き」や「知る人ぞ知る賢い選択肢の1つ」というのが日本の現状です。
PHEVシェアは近年どう変わった?
ここ数年のPHEVシェアの移り変わりを、データで見てみましょう。
下の表は、軽自動車を除いた乗用車の新車販売台数に占めるPHEVの割合をまとめたものです。
| 年 | PHEV(PHV)台数 | PHEVシェア率 | 参考:HVシェア率 |
| 2024年 | 43,132台 | 1.7% | 61.1% |
| 2023年 | 52,143台 | 1.9% | 55.1% |
| 2022年 | 37,772台 | 1.7% | 49.0% |
| 2021年 | 22,777台 | 0.9% | 42.8% |
| 2020年 | 14,741台 | 0.6% | 37.1% |
出典:自販連(JADA)「燃料別登録台数(年別統計:2020〜2024)」より作成
表を見ると、2020年にわずか0.6%だったシェアが、新しいモデルの登場や補助金の後押しもあって順調に伸び、2023年には1.9%まで到達したことがわかります。
2024年は少し数字を落としましたが、それでも5年前と比べると約3倍の規模に成長しています。
しかしそれ以上に伸びているのがハイブリッドです。日本がphev化よりもハイブリッド化が戦略の中心にするのもうなづけます。
圧倒的強さのHVの中でPHEVを選ぶ理由
それにしても、日本の市場はハイブリッド車(HV)が本当に強いですよね。
2024年には、新しく売れたクルマ(軽除く)の10台に6台以上がハイブリッド車という、まさに「ハイブリッド大国」です。
この圧倒的なHV人気の中で、PHEVはどのような方に選ばれているのでしょうか。
PHEVの大きなメリットは、普段の買い物や通勤は電気だけで静かに走り、週末の遠出はガソリンを使って電欠の心配なく走れる、という「いいとこ取り」ができる点です。
ご自宅に充電コンセントを設置できる環境があり、国や自治体の補助金を上手に活用できる方にとっては、ガソリン代を大きく節約できる、非常に合理的な選択肢の1つとなります。まだまだ少数派ではありますが、ご自身のライフスタイルにピッタリ合う方々が「賢い選択」としてPHEVを選んでいる、という構図が見えてきますね。
そうした選択をされているオーナーさんたちは、本当にクルマの価値を最大限に引き出していると言えるでしょう。

