「GRヤリスRSはダサい」…
もしかすると、あなたもそんな噂を耳にしたことがあるかもしれませんね。たしかに、あの迫力あるワイドボディの見た目に対して、エンジンは1.5LのNA、トランスミッションはCVTです。
「見た目と中身が釣り合ってない」という声があるのは、仕方のないことかもしれません。でも、RSには「軽さ」や「維持費の安さ」といった、上位グレードのRZ系にはない確かなメリットも存在します。
この記事では、GRヤリスRSの購入を検討するうえで知っておきたい情報を、専門家ではない公平な立場で集めました。「ダサい」と言われる理由を深掘りしつつ、メリットや後悔しないための注意点もしっかり整理していきます。
この記事でわかること
- GRヤリスRSが「ダサい」と言われてしまう本当の理由
- 維持費や燃費など、RSならではの具体的なメリット
- 上位グレード(RZ系)と比べて後悔しやすい注意点
- 結局、RSはどんな人に向いている選択肢なのか
GRヤリスRSはダサい?
GRヤリスRSが「ダサい」と言われることがあるのは、その本格的なスポーツカーとしての外観と、搭載されている1.5LのNAエンジンおよびCVTという比較的穏やかな中身(パワートレイン)との間に大きなギャップがあるためです。これは「期待していた走りと違う」という、期待値の問題が主な原因と考えられます。
しかし、RSはGRヤリス専用に設計されたワイドボディや、コストのかかる後輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションといった「骨格」を、上位グレードのRZと共有しています。
2024年のモデルチェンジで新車のラインアップからは外れましたが、その結果、「中古車で狙う、実用性と軽快さを備えたスポーツモデル」という独自の立ち位置を確立しつつあります。
「なんちゃって」と言われる3つの理由
なぜ「ダサい」という声が上がるのか、その背景を整理しました。
- 外観と中身のギャップ:上位グレードのRZとほぼ同じ、迫力あるワイドボディや専用エアロをまとっています。それなのに、エンジンは1.5Lの自然吸気(NA)でトランスミッションはCVT。「こんなに速そうな見た目なのに、走りは普通なんだ」と感じる人がいるようです。
- CVT特有のフィーリング:CVTは、アクセルを踏み込んだ時に、エンジン回転数だけが先に高まり、後からスピードがついてくるような独特の感覚があります。この「回転先行感」が、スポーツカーらしいダイレクトな加速フィールを求める人にとっては「楽しくない」「物足りない」と感じる原因になることがあります。
- 「GR」ブランドへの印象:トヨタのスポーツブランド「GR」の名が付いているため、「GR=最速・最強」というイメージが先行しがちです。そのため、FF駆動でCVTのRSを「なんちゃってスポーツ」と短絡的に評価してしまう声もあるようです。
評価ポイントは「高いボディ剛性」と「軽さ」
一方で、RSを擁護する声や、その魅力を示す事実も多くあります。
- ボディと足回りは「本物」:RSは、見た目だけを似せたモデルではありません。GRヤリス専用の3ドアワイドボディ、高いボディ剛性、そして走行安定性と乗り心地に大きく貢献する後輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用しています。これらはRZ系グレードと共通の、GRヤリス専用設計の恩恵です。
- 「軽さ」は絶対的な武器:RSの車両重量は、装備によって約1110kg~1130kgです。対して、4WDターボのRZ系は約1260kg以上あり、RSは100kg以上も軽量です。この軽さが、街乗りや峠道での軽快なハンドリングや、キビキビとした動きにつながっています。
- 専門家からの評価:一部の自動車メディアでは「日常で使うならRSがベストバイ」「軽さを活かした走りが楽しい」といった肯定的な試乗レポートも見られます。速さだけではない「楽しさ」がRSにはある、という評価です。
中古で探すなら「外観」にも注目
中古でRSを探す際に、見た目の印象を良くするポイントです。
- ボディカラーGRヤリスのカタログには、プレシャスブラックやプラチナホワイトパールマイカといった、ボディの抑揚を際立たせるカラーが設定されていました。色によっても車の印象は大きく変わります。
▼車選択メモの考察
「ダサい」かどうかは、結局のところ、その人がGRヤリスRSに何を一番に求めるか次第のようです。
RZのような「絶対的な速さ」や「サーキット性能」を期待すると、RSは期待外れに終わるでしょう。
しかし、「GRヤリスの特別なデザイン」を「日常の使いやすさ」や「軽快な走り」と共に手に入れたい、と考える人にとっては、RSは非常に合理的で魅力的な選択肢だと整理できます。
▼情報の取り扱いについて
この記事で触れているRSの仕様は、主に2022年9月時点のトヨタ公式PDFに基づいています。 ([GRヤリス旧型録(2022/09)])
RSは2024年以降の新車ラインアップには含まれておらず 、現在は中古車でのみ探すモデルとなる点にご注意ください。
GRヤリスRSのメリットは?
GRヤリスRSの最大のメリットは、GRヤリス専用の優れたボディや足回り(シャシー)という「素性の良さ」を持ちながら、1.5Lエンジンならではの「維持費の安さ」と「日常での扱いやすさ」を高いレベルで両立している点です。
新車販売が終了した今、中古車市場において、通勤や買い物から週末のドライブまで、1台で幅広く楽しみたい人にとって、非常にバランスの取れた特性を持っています。
メリット①:維持費が家計に優しい
RSは、日々の生活の中で車を使う人にとって大きな利点があります。
- 自動車税が安い:RSは1.5L(1,490cc)エンジンなので、2019年10月以降に新車登録された場合、年間の自動車税は30,500円です。一方、RZの1.6L(1,618cc)エンジンは区分が上がり、年額36,000円となります。毎年支払う固定費として、この5,500円の差は小さくありません。
- 燃費が良い:RSのWLTCモード燃費は18.2km/Lです。 対して、RZ(進化型)は10.8km/L~12.4km/Lであり、RSの燃費性能は際立っています。通勤などで毎日乗る人にとっては、燃料代の節約効果が期待できます。
メリット②:「軽さ」が日常の乗り心地に貢献
車重が軽いことは、多くのメリットを生みます。
RSの車両重量は仕様によりますが約1110kg~1130kg。これはRZ(進化型)の約1260kg~1300kgと比べて、100kg以上も軽量です。
この「軽さ」は、加速や減速のスムーズさだけでなく、駐車場での切り返しや細い道でのすれ違いなど、日常のあらゆる場面で「運転のしやすさ」や「安心感」として実感できるポイントです。
メリット③:RZ譲りの専用ボディと足回り
RSはエンジンこそ穏やかですが、車の土台となる部分はRZと多くを共有しています。
ワイドトレッドを実現するための専用3ドアボディや、優れた路面追従性を生み出す後輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションは、RSでも標準装備です。
「GRヤリスでしか味わえない特別な乗り味」の一端は、RSでも十分に体験できます。
中古で探す場合の魅力
RSは中古車で探すことになりますが、それゆえの魅力もあります。
- 狙い目の装備RSには「Light Package」という仕様が存在しました。これには、BBS製の18インチ鍛造アルミホイールやカーボンルーフといった、軽量化と見た目の向上に貢献する高価なパーツが装備されていました。中古車でこの仕様を見つけることができれば、非常にお得感があるかもしれません。
- 流通量新車販売が終了したことで、中古車市場での流通が活発になっています。大手中古車サイトでも多くの在庫が見つかるため、選択肢は比較的豊富と言えます。
評判・評価が分かれる?向いている人の特徴
メリットを整理すると、RSがどんな人に適しているかが見えてきます。
- 向いている人
- GRヤリスの特別なデザインが好き
- 通勤や街乗りがメインで、維持費(税金や燃費)を抑えたい
- FF(前輪駆動)の軽快なハンドリングが好き
- サーキット走行はしないが、週末のドライブを楽しみたい
- 向いていない人
- サーキットやジムカーナで本格的にスポーツ走行をしたい(RZ/RC推奨)
- 0-100km/h加速のような、圧倒的なパワーと速さを最優先する
- 4WDの走行安定性やMTの操作感を求めている
スペックで見る「RZとの決定的な違い」
RS(2022-2024年販売モデル)と、現在のRZ(2024年- 進化型)の主な違いを比較表にまとめました。
| 項目 | RS “Light Package” (2022-2024) | RZ (進化型 2024-) |
| エンジン | 1.5L NA (M15A-FKS) | 1.6Lターボ (G16E-GTS) |
| 駆動/変速 | FF/Direct Shift-CVT | 4WD/6MT or 8AT |
| 最高出力/トルク | 120PS/145Nm | 304PS/400Nm |
| 車両重量 | 1110–1130kg | 1260kg(6MT)/1300kg(8AT) |
| WLTC燃費 | 18.2km/L | 12.4km/L(6MT)/10.8km/L(8AT) |
| 後輪サス | ダブルウィッシュボーン | ダブルウィッシュボーン |
| 新車設定 | 終了 (中古のみ) | 継続販売 |
▼車選択メモの考察
こうしてスペックを比較すると、RSとRZは「同じ名前の別の車」と言えるほど特性が異なることがよく分かりますね。
RZが「走りの性能」にコストと技術を集中させているのに対し、RSは「見た目の特別感」と「日常での経済性・実用性」を非常に高い次元でバランスさせているモデルだと整理できます。
特に燃費と税金の差は、車を「日常の足」として使う頻度が高い人ほど、後からじわじわと効いてくる大きなメリットだと感じます。
▼情報の取り扱いについて
表内のスペックは、トヨタ自動車が公表した各年式の資料に基づいています。
自動車税の金額は2019年10月1日以降に初回登録された自家用車の場合の例であり、お住まいの地域や登録時期によって異なる場合があります。中古車の価格や状態は、個々の車両や販売店によって異なります。
GRヤリスRSのグレードを選択する後悔ポイントは?
GRヤリスRSを選ぶ際に後悔する可能性があるポイントは、主に「(1)中古車でしか購入できず、最新の改良が反映されていない点」、「(2)RZ系と比べたブレーキ性能や駆動方式(FF+CVT)による、走りの性能上限が低い点」、「(3)電動パーキングブレーキ(EPB)採用により、一部のスポーツ走行が楽しめない点」が挙げられます。
購入した後に「やっぱりRZにしておけば良かった」と感じないためにも、RSが持つ特有の制約を事前に理解しておくことが大切です。
①:新車で買えず、最新改良がない
これが最も大きな前提条件です。
- 現行ラインアップにない:RSは2024年のモデルチェンジでラインアップから外れました。現在(2025年10月時点)は新車で購入することはできず、中古車で探すしかありません。
- 最新の改良が手に入らない:2024年に発表された「進化型」のGRヤリスでは、RZ系に新開発の8速AT「GR-DAT」が追加されたり、運転席周り(コクピット)が大幅に改良されたりしました。当然ながら、それ以前のモデルであるRSでは、これらの最新装備を選ぶことはできません。
②:RZとのブレーキ性能の「違い」
RSのブレーキは、街乗りや高速道路では十分な性能ですが、RZ系と比べると容量が小さいものが採用されています。
RZ(進化型)は、サーキット走行も見据えた大型の対向ピストンキャリパーブレーキを装備しています。
そのため、峠道の下り坂が長く続くような場面や、サーキットでスポーツ走行を試みた場合、ブレーキの効きや熱に対する強さ(耐フェード性能)に明らかな差が出やすく、「もっと止まってほしい」と不安を感じる可能性があります。
③:内装がEPBで「サイドターン困難」
RSは、スイッチで操作する電動パーキングブレーキ(EPB)を標準装備しています。
これは日常使いでは非常に便利ですが、ジムカーナや雪道などで、レバーを引いて後輪をロックさせる「サイドターン」のような運転操作は、実用上困難です
ちなみに、2025年の一部改良でRZ/RC系では競技用の「縦引きパーキングブレーキ(手引き式)」が選べるようになりましたが、RSはラインアップにないため対象外です。
「手引きサイド」にこだわりがある人は、決定的な後悔ポイントになります。
④:純正強化オプション(エアロ等)非対応
トヨタ(GAZOO Racing)は、GRヤリスの走行性能を高めるための様々な純正オプションパーツを開発・販売しています。
例えば2025年4月には、冷却性能や空力性能を高める「Aero performance package」が発表されましたが、これはRZやRC向けの専用設定です。
RSには、このようなメーカー純正の本格的な走行性能強化オプションは用意されていません。「買ってからチューニングしたい」と思っても、純正パーツでの「伸びしろ」がRZ系より限定されます。
⑤:CVT特有の「つまらない」加速感?
RSのトランスミッションは、10速のマニュアルモードも備えた「Direct Shift-CVT」です。
しかし、CVTである以上、アクセルを踏んだ時にエンジン回転数が先に上がり、後から速度がついてくる独特の感覚は残ります。
RZのMT車や、新しい8速AT(GR-DAT)のような、小気味よい変速リズムやダイレクトな加速感を期待していると、「思っていたスポーツカーと違う」と感じる可能性があります。
⑥:中古車は「安全装備の有無」を要確認
RSが新車販売されていた当時、衝突被害軽減ブレーキやレーダークルーズコントロールといった先進安全装備(Toyota Safety Senseなど)は、「予防安全パッケージ」としてオプション設定でした。
そのため、中古車市場には、これらの安全装備が「付いている個体」と「付いていない個体」が混在しています。
「当然付いていると思っていた」とならないよう、中古車を探す際は、希望する安全装備がその車両に備わっているか、一つひとつ確認する必要があります。
⑦:カーボンルーフの修理費(維持費)リスク
標準装備されているカーボンルーフは、軽量化に貢献する魅力的な装備です。
しかし、カーボン素材は特殊なため、もし飛び石や事故、雹(ひょう)などで損傷した場合、一般的なスチールルーフのような板金修理ができません。
ルーフ交換となると修理費用が非常に高額になる可能性がある、というリスクは知っておく必要があります。
▼後悔しないためのチェックリスト
RSの「後悔ポイント」を整理すると、その多くは「RZ(サーキット志向)と比較した場合の物足りなさ」に集約されるようです。
購入してから「こんなはずじゃなかった」とならないために、以下の点を自問自答してみることをお勧めします。
- 用途: 将来的にサーキットを走る可能性は? 高速や峠道を攻める頻度は?
- 操作系: 「手引きサイドブレーキ」が使えなくても本当に後悔しないか?
- 最新装備: RZ(進化型)の新しい8速AT「GR-DAT」や改良型コクピットに未練はないか?
- 安全装備: 中古車探しで、予防安全パッケージの有無を妥協しないか?
もし、「街乗りメインで、見た目が良くて、維持費が安いのが一番」と割り切れるのであれば、RSは後悔の少ない、非常に賢い選択になるかもしれませんね。
▼情報の取り扱いについて
記載されている装備や仕様は、トヨタ自動車が公表した過去(2022年9月時点)および現行(2024年以降)のカタログやプレスリリースに基づいています。
中古車の状態、装備、および修理費用は、個々の車両や販売店、整備工場によって大きく異なります。購入を検討される際は、必ず現車をよく確認し、販売店にご相談ください。

